ホーム > イベント > 新着情報 > 【報告】2016年度海外起業研修を実施致しました

EVENT イベント


2016.10.13

【報告】2016年度海外起業研修を実施致しました

以下の通り、GTEPモジュールA2海外起業研修を実施した。

 

期間:9月17日(土)~24日(土)

訪問国:イスラエル

参加者:19名(学生13名、社会人6名)

1

 

1日目(9月18日)

9月17日に日本を発ち、トルコ・イスタンブールを経由して18日(日)にイスラエル着。到着後間もなく、最初の訪問先であるベンチャーキャピタルVertex Ventures社へ。

 

Vertex Ventures

Vertex社は、1997年、イスラエル政府のYozma Program(VC育成プログラム)によって設立された、イスラエルトップランクの投資会社である。Vertex社General PartnerのDavid Heller氏に迎えられ、ランチをいただきながら、Vertexやイスラエルのエコシステムについてレクチャーを受けた。Heller氏は過去に5年間日本に住んでおり、京都大学法学部に留学し日本の弁護士事務所に勤務した経験を持つ。Vertexの運用資金は750Mドル。日本企業29社からも投資を受けている。これまでに4つのファンドを起ち上げ、118社に投資、内43社がエグジットしている。Heller氏によると「日本企業はこれまで自前主義(Not Invented Here)であったがオープンイノベーションに変わりつつあり、イスラエルにリサーチセンターを設立し、イスラエルの技術を取り入れようとしている。我々は日本企業とイスラエルのスタートアップをつないでいる」。またイスラエルは、1人当たりのスタートアップ数、VC投資、エンジニア・科学者数、GDPに占めるR&D費などが世界一であ%ef%bc%92り、起業家精神を育む文化があると説明。「イスラエル人は人違うことを好み、個人主義。年齢、肩書に関係なく議論をしつくす。リスクを取ることを推奨され、失敗を恐れず、失敗は許容される。失敗を共有する会議「Failure Conference」まであり、お互いが失敗から学び成長する。イスラエルでは、アントレプレナー、特にシリアル・アントレプレナーが最も尊敬される」。ベンチャーがたくさん生まれる理由の1つとして強く言っていたのは、徴兵制。イスラエルには3年間の徴兵があり(女性は2年間)、その間に高度な技術スキルを身につけ、大きな責任を持って行動する経験を得て、自信を持つようになる。そのような経験を持って大学に進学するため、進学する目的意識は非常に高い。またイスラエルでは、軍は研究開発成果の特許を取らず、徴兵を終えた若者は学んだ技術を基にテックベンチャーを設立する。特に、軍のエリート部隊である8200部隊出身者から有望なベンチャーがたくさん生まれている。有名なカプセル内視鏡「Pillcam」はミサイルの追尾技術を転用したものである。イスラエルの特徴として市場が無いため、イスラエルのスタートアップは最初から海外を見据えてビジネス活動をする。レクチャーに続いて、質疑応答。到着後すぐにも関わらず、VCについての基本的な質問から、軍の技術をベンチャーが利用しても防衛上問題が無いのかなど、多くの質問がされ、Heller氏は1つ1つの質問に丁寧に回答してくださった。

 

エルサレム

Vertexを後にして、エルサレムに観光へ。今回の研修スケジュールにおける観光は、この半日のみ。まず、イスラエル博物館。死海文書で有名な国立博物館で、死海写本館には紀元前3~2世紀に筆写された、今日発見されている聖典の中でも世界最古のヘブライ語聖典が所蔵されており、イザヤ書や詩篇など600を超える巻物がほぼ完全な形で現存している。1/50縮小の第2神殿時代のエルサレム模型を見学。続いて、城壁に囲まれた旧市街へ移動。ヤッフォ門から入り、イエスの十字架が建てられた聖墳墓教会へ。十字架から降ろされたイエスの聖骸に香油を塗った場所とされる香油が注がれた石などがあった。最後は、嘆きの壁。礼拝場所が男女で分かれており、参加者も分かれて見学。男性は頭にキッパを載せなければならない。両所とも多くの信者が壁に向かって祈りを捧げていた。

 

観光を終え、ホテルへ。その後は、ホテルのルーフテラスにて懇親会。1日目終了。

 

2日目(9月19日)

Rise Tel Avivからスタート。

 

Rise Tel Aviv

まず、本学経営管理大学院、椙山泰生教授より、参加者に対してGTEPの概要について、また産官学連携本部の木谷哲夫教授より、GTEP海外起業研修の趣旨、最終ピッチの取り組み方について説明があった。次に参加者の自己紹介。経営コンサルタント、元投資銀行、起業家、医師など多種多様なバックグラウンドの方々が参加しており、各々、研修への意気込みや、将来の目標などについて語った。%ef%bc%93

その後、在イスラエル日本大使館の山本敏夫公使より、イスラエルの歴史、地政学、イスラエルと日本の違いなどについて講演。イスラエルはスタートアップ国家で、TEVA、GIVEN IMAGING(カプセル内視鏡)、SanDisk、Check Point(セキュリティ)、NETAFIM(点滴灌漑)、waze(地図)など多くのスタートアップが生まれている。またイスラエルは、サバイバル国家でもあり、国家存亡の危機に、なんとか生き延びていくために新しい技術・事業を生み出してきたとのこと。海上封鎖をされるとイスラエルには物が入ってこなくなる。薬が不足したときのために、テバはジェネリック医薬品を作り出した。山本氏も徴兵制、失敗が許容される文化について言及される一方で、イスラエルには大きな市場が無いためベンチャーが海外流出しており、今後将来に渡って継続的にイスラエルが成長していけるかどうかはハテナではとも仰っていた。

%ef%bc%94山本氏に続いて、Aniwo社CEO寺田彼日氏より講演。寺田氏は京都大学経営管理大学院を卒業後、イスラエルでAniwo社を起業。起業家、投資家、ユーザーが交流できるプラットフォームMillion Timesを運営し、ピッチイベントやミートアップイベント、日本企業とイスラエルベンチャーのマッチングなどを行っている。今回の研修においては、コンテンツの作成、訪問先のアレンジ、現地でのガイド、ファシリテーションと、多大なご協力をいただいた。寺田氏からは、イスラエルの概要とAniwo社について、どうやって起業したか、どうやって仲間を見つけたか、現在までの経緯などについての話があった。イスラエルにおいて日本のベンチャーは珍しく注目を集め、起業すぐにイスラエルでイベント開催しまくり、Aniwoのプレゼンスを高めると共に現地人とのコミュニティを形成した。日本とイスラエルのハブを目指している。その後、参加者からは、「なぜ起業したのか?」「なぜイスラエルなのか?」「外国人として起業することのメリット・デメリットは?」など多くの質問があった。イスラエル人は見返りを求めず、「give & give & give & give」。起業家として周囲の人々への感謝の気持ちを忘れないことが大切だと寺田氏は言っていた。

 

Argus%ef%bc%95

Rise Tel Avivでランチを取り、午後はヘルツェリアにあるベンチャー・Argus社へ。Argusはコネクテッドカーや一般の自動車をサイバー攻撃、カーハッキングから守ることを支援する自動車向けサイバーセキュリティーベンチャーで、東京にもオフィスを構える。Argus社より、コア技術の概要について説明を受け、カーハッキングについてのビデオを聴講。ネットとつながるコネクテッドカーや自動車内部の機器は、世界中どこからでもラップトップ1つでハッキングされる恐れがあるが、自動車メーカーはArgus社の技術やコンサルティングによってハッキングを防ぎ、事故によるリコールを回避することができる。Argusのボードメンバーには、イスラエル軍8200部隊出身のシリアル・アントレプレナーが入っている。競合としてハーマン%ef%bc%96やシマンテックなどがいるが、Argusは20のパテントが強み。参加者からの「次のターゲットは?」との質問に対し、「IoT化され、ハッキングの被害が大きくなりそうな分野」。また「なぜアーリーステージで大きなファンディングが可能なのか?」との質問に対しては、「チームが強力だから」と回答。レクチャーの後は、外に出て、実際にカーハッキングを体験。近くの駐車場に実験用のジープが停めてあり、参加者から何名かが試乗した。運転中にArgus社の技術者がノートPCを操作すると、いとも簡単にブレーキがかけられたり、窓が開き出したりと異常が発生。公道や高速道路でどうようのことが起これば、大事故につながる。乗車していた参加者は、絶叫を上げながらも楽しそうだった。

 

2日目最後も地元のバーで懇親会。イスラエルの起業家やサムライインキュベート・COOの池上隼人氏、在イスラエル日本大使館・二等書記官の松本理恵氏も参加してくださった。本日のスケジュールは懇親会で終わりだが、その後も各チーム、最終ピッチに向けた打ち合わせを夜遅くまで続けていた。

 

3日目(9月20日)

サムライインキュベート%ef%bc%97

サムライインキュベートのイスラエル拠点、サムライハウスからスタート。まず、サムライインキュベート・COOの池上隼人氏より、同社について説明。サムライインキュベートは品川に本社を置く、インキュベーターで、イスラエルに支社を持ち、サムライハウスは同社が運営する起業支援のためのコワーキングスペースである。また同社は投資ファンドの運用も手がけており、シード・アーリーを対象として日本で100社以上、イスラエルで20社以上の実績を有し、投資実績は国内最大数である。投資基準は、①450万円の出資 / 15%普通株式、②ITビジネス(ウェブ、モバイルアプリ、システムなど)、③世の中の課題を解決する革新的なサービス、④チームにプロダクトを作れる開発者がいること、⑤侍魂をもっていること(使命感、正義感、コミットメントなど)。参加者は聞きたいことがたくさんあるだろうからということで、説明は早々に切り上げ、質疑応答へ。参加者からは、「Valuationとは?」「VCの仕組みは?」「なぜイスラエルに支社を?」「サムライインキュベートの利益は?」「ベンチャーのどこを見て投資を決める?」「どこまでHands-onするか?」などなど多くの質問が出た。「どこを見て投資を決める?」との質問に対する回答は、解決する課題の大きさ、ソリューション、チームメンバー。

続いて、サムライインキュベートが出資するベンチャー3社のピッチがあった。

1.Retube

YouTubeの動画を簡単に編集でき、プロモーション動画を作成することができる。またSNSでシェアしたり、組み合わせたりすることも可能。動画を通して商品が売れたら入金される。日本企業とも交渉中。

  1. WonderVoice Technologies

手を使わずに音声で機器をコントロールできるプラットフォームを開発。多くのIoT製品があるが、UIレベルが低く、使い勝手が悪いという課題を解決。多くのピッチコンテストで受賞。メディアでも紹介。LINEを送るだけで、自宅の照明やエアコンのオンオフをコントロールできる技術も開発。Siriよりも認識精度が高い。ターゲットには、より快適な生活を送りたい人々だけでなく、老人や障害者など身体的に不自由な人々も含まれる。

  1. Lemmeno

ネット上の記事の一部を他人とシェアしたいときに、コピペすることなく、かつハイライトしたり、コメントを加えたりするなど簡単に編集して、シェアすることができる。

 

FutuRx%ef%bc%98

サムライハウスでのランチを経て、FutuRxへ移動。FutuRxはバイオアクセラレータで、武田薬品工業、OrbiMed(ヘルスケアに特化したVC)、ジョンソン・エンド・ジョンソンがコンソーシアムを組み設立。イスラエル政府指定のインキュベーターとしてライセンス付与されている。まず、FutuRx・CEOのEinat Zisman氏、Noga Yerushalmi氏よりFutuRxについての説明があった。予算はシードファンディングとして、1社当たり$2.1M。アーリーステージのバイオベンチャーを支援対象とし、シリーズAに向けた支援を実施している。共有実験機器、製薬企業 のサポート、出資を3本の柱にしており、300㎡のラボスペースを保有。支援対象の疾患領域は決めていないが、医療機器は対象外。現在支援している9社には、オンコロジーやCNCを対象にしたものが多く、その他希少疾患を対象にしたベンチャーも含まれている。レクチャー後は、FutuRxのシェアードラボを見学。9社が入っているというわりには、思ったより小じんまりとした印象を受けた。

 

IDC Herzliya%ef%bc%99

FutuRxを後にして、3日目最後はIDC Herzliya。IDC Herzliyaは教育機関で、アントレプレナー教育に力を入れている。中でもZellというプログラムは、これまで68社のスタートアップを生み、内8社が買収という形で成功をおさめている。まず、Zell Entrepreneurship ProgramのMoran Nir氏(Executive Director)より、Zellについての説明があった。Zellは起業家を目指す学部学生のためのプログラムで、異なる学部から生徒が参加し、2015年までに298人が卒業し、85社のべンチャーが誕生している。先日訪問したArgusもその1つである。85社中18社はエグジットしている。メンターには、起業家やVCなどがおり、Googleに買収されたベンチャーwazeの創業者もその1人である。GTEP海外起業研修のような活動もあり、学生が2週間かけて米国のベンチャー・エコシステムを体感する。次いで、椙山先生よりGTEP及び海外起業研修について紹介した。

%ef%bc%91%ef%bc%90その後、ワークショップ開始。今回は、GTEP参加者とIDC Herzliyaの学生とでグループを作り、Zellの簡易版として簡単なワークショップ「Reinvent Shopping」を実施してもらった。参加者は6つのグループに分かれ、それぞれには「sustainability in a world of consumerism」「manufacturing a delivery in」「when online & official meet」などのテーマが与えられる。テーマに関し、これまでの経験を共有しながら、日本とイスラエルの共通点と相違点についてディスカッションし、それぞれ3つ見つけ出し、最後に各グループのリーダーが発表した。例えば、「日本ではゴミを分別し、リサイクルするが、イスラエルでは分別はしていない」「日本では、通販の商品は数日で配達されるが、イスラエルでは数週間かかる」などの意見が出た。イスラエルに来てからこれまではレクチャー中心で、英語ということもあり皆の前で積極的に発言できない参加者もいたが、ワークショップではグループに分かれてのディスカッションであるため、皆がIDC Herzliyaの学生と英語でやりとりでき、また各テーブルにはドリンクやスナックが用意され、打ち解けた雰囲気の中、GTEP参加者、IDCの学生共にディスカッションを楽しみ、全体的に大変盛り上がっていた。

3日目の予定はこれで終了だが、各チーム、それぞれのチームワーキングへ。最終ピッチまであと2日となり、どのチームも議論にますます熱が入ってきている。

 

4日目(9月21日)

Trendlines

Trendlinesへ。テルアビブから離れた片田舎に存在するTrendlinesは、インキュベーターで、特に医療系、農業系のスタートアップの支援をしている。施設の提供、技術開発、資金調達、マーケティング、経営と広範なフェイズでベンチャーを支援し、2015年末時点で46社がポートフォリオに含まれている。これまで2社上場し、6社が買収された。建物に入ると、そこにはたくさんの医療機器が展示されていたが、これらはTrendlinesの支援を受けたベンチャーが生み出したイノベーティブな医療機器である。

まずは椙山先生からGTEP及び海外起業研修の概要説明。次にTrendlinesのShira Zimmerman氏から、なぜイスラエルがStart-up Nationと呼ばれるかについての説明があり、政府が継続的にベンチャー支援をしていることや、起業家精神、防衛産業の民生利用、技術者・科学者が多くいること、GDPに占めるR&D費の高さなどを挙げていた。イスラエルのライフサイエンス分野では、特に医療機器に重視しており、その理由の1つとして医療機器は創薬に比べて、市場に出すまでの期間が短いことが挙げていた。イスラエルベンチャー発の医療機器として有名なものには、先述したカプセル内視鏡があるが、これは、医師と技術者がコーヒーを飲みながら雑談していたときに生まれた。医師が何気なく自分の抱える課題を話したところ、技術者がその解決にミサイル技術を利用できることを思いついた。イスラエルのインキュベーターについても言及。イスラエルには18の技術系インキュベーターがあり、運営資金の85%を政府が拠出している。続いて、%ef%bc%91%ef%bc%91Trendlinesのベンチャー支援について説明。年間の受け入れは8社までで、投資基準は、技術、事業計画、チーム、市場。特に市場について、どれだけの人々が、どれだけのペイン(ニーズ)を持っているかを重視するとのこと。またTrendlinesが支援するベンチャーの紹介もあった。その中のApiFix社は、脊柱側弯症の治療機器を開発している。従来は、幼少期に手術をして長いロッドを背中に埋め込むか、長期間に渡って矯正器具を装着しなければならず、患者の身体的・精神的な負担が大きかったが、同社が開発した医療機器は小さく、背骨の2箇所で取り付けるだけで矯正することできる。手術の傷口は小さくてすみ、また見た目には何も変わらないので、小児の負担を大きく軽減することができる。この医療機器には皆、大変驚いていた。このようなイノベーティブなアイデアを生み出す発想法はどうすれば習得できるのだろうか。

 

Technion - Israel Institute of Technology%ef%bc%91%ef%bc%92

Trendlinesを後にし、近くのレストランでランチをして、ハイファにあるテクニオン・イスラエル工科大学へ。テクニオンは、1912年設立のイスラエル最古の国立大学で、工学、科学、医学に強みを持つ工科大学である。まずは大学の紹介ビデオを視聴し、次いで頭にキッパを被った同大学の学生がキャンパスマップを見せながら、テクニオン大学について説明してくれた。広大な敷地の中に計18の学部及び教育機関を擁し、ノーベル賞受賞者2名(いずれもノーベル化学賞)も教鞭をとっている。卒業生の大半が自ら事業を起しており、これまでに米国NASDAQに70社以上が上場を達成している。

大学の紹介に続いては、たくさんのパソコンが並ぶ部屋へ移動してワークショップ。参加者は2人1組になって、各パソコンの前に着席。ワークショップの前に、参加者は一人ずつ簡単な自己紹介。その後、SandboxModel社CEOのGuy Shtub氏より「Planning and Executing Simple Projects」と題して、Project Managementについてのレクチャーがあった。「なぜプロジェクトの完遂が難しいのか?時間通り、完璧に仕上げるのは、全プロジェクトの32%だけ」「プロジェクトの定義とは?Project Managementとは何か?」「ステークホルダーのニーズに対して、期待以上の成果を出すためには、知識、道具、スキル、技術をプロジェクトに活用、応用しなければならない」などの話があった。またProject Managementでは、時間、コスト、人材、リスクなどについて考えなければならず、Project Team Buildingはプロジェクト成功要因の1つとのこと。そこで参加者は、シミュレーターを使って、このPTBを体験する。シミュレーターの設定は、「あなた%ef%bc%91%ef%bc%93は航空交通管制レーダーの開発プロジェクトを任命され、ライバル会社に奪われたシェアを奪還するために、新しいレーダーを開発しなければならない」というもの。ただし、目標時間内にできるだけ早く、最小コストで、最大価値を生み出さなければならない。エンジニアやテクニシャンの数やモラル、ガントチャートの開発工程などを調整しながら、時間・コストの最小化と価値の最大化をはかる。予算や期限をオーバーするとペナルティ。逆にそれ以内で完成させれば、ボーナスが入る。最終的に得られた価値の大きさでプロジェクトが評価される。シミュレーションには3つのシナリオが用意されており、レベルが上がると調整すべきパラメーターや達成すべきゴールが増え、リクスが大きくなる。このシミュレーターはよくできたソフトウェアで、参加者はパートナーと熱心にディスカッションしながら、パラメーターを調整し、シミュレーターに没頭していた。最終結果で、参加者の1組が過去最高得点をマークしたのには驚かされた。最後にShtub氏よりまとめ。「プロジェクトにおいて、全ての目標を100%達成できるようなプランはない。時間・コスト・質にはトレードオフがある。そのプロジェクトにとってはどの目標が重要なのかを見極めて、それらを最大化するプランを作り上げていくことが重要である。」%ef%bc%91%ef%bc%94

以上で、長い長いワークショップが終了。長時間バスに揺られて、ハイファからテルアビブのホテルを帰着。いよいよ最終ピッチを明日に控え、どのチームも休むことなく、ビジネスプラン、ピッチ資料の作り込みに入る。長い夜の始まり。

 

 

 

 

5日目(9月22日)

海外起業研修最終日。いよいよ最終ピッチ。

 

Tel Aviv Stock Exchange%ef%bc%91%ef%bc%96

最終ピッチの前にテルアビブ証券取引所を訪問。ガイドが案内してくれた。まずムービーを視聴。歴史などイスラエルについての説明から始まり、多くのノーベル賞受賞者を輩出していること、ユダヤ人にはアインシュタインやフロイトなど優秀な人物がいること、またイスラエル発ベンチャーの紹介があった。ムービーの後は、展示場へ。農業や医療・ヘルスケア、科学など各分野のイスラエル発ベンチャーが生み出した製品やサービスが紹介されており、体験もできる。点滴灌漑やカプセル内視鏡、見たものを音声で知らせてくれる視覚障害者のための機器、日本のサイバーダインが開発したHALのような支援機器もあった。いずれもイノベーティブなものばかりであったが、中でも驚いたのは、空気中の水分から飲料水を作る機器。またVRを利用したゲームも展示されており、参加者たちは皆、声をあげながら臨場感あるVRの世界を堪能していた。

 

Final Pitch%ef%bc%91%ef%bc%97

証券取引所見学の後、近くのマックスブレナーでランチを取り、最終ピッチ会場へ。会場は2日目に訪れたRise Tel Aviv。最終ピッチ開始まで時間があるので、各チーム、ピッチ資料を作り直し、英語でのピッチ練習などなど最後の仕上げに取り組む。ほとんどのチームが昨晩はほぼ徹夜であったが、最後の最後まで手を抜くことなくブラッシュアップに励んでいた。

Aniwo寺田氏の司会の下、ピッチコンテスト開始。まず椙山先生から再度GTEPおよび海外起業研修の趣旨について説明。続いて、審査員の紹介。審査員長は初日に訪問したVertex社のDavid Heller氏が務め、その他Heller氏と同じく4名のVCの方が審査員を務めてくださった(日本人の方も1人おられた)。発表はチーム1から順番で、各チームのビジネスアイデアは以下:

 

チーム1「i-DERU%ef%bc%91%ef%bc%98

京大生2人と現役コンサルタントのチームで、本学情報学研究科の中澤篤志准教授が開発したアイトラッキング技術を使った、アイドルオタクをターゲットにした新規デバイスを提案。アイドルオタクは、アイドルとの1対1のコミュニケーションを望むが現状それはかなわない。そこで提案するのが「i-DEL」。これをアイドル、オタク、双方が装着し、オタクが送った視線「ラブビーム」とアイドルの視線がマッチすれば、オタクはアイドルから直接メッセージを受けることができるというもの。製品コンセプトは「help you to bring your love」。最初のチームということでかなり緊張している様子であったが、ピッチ後の質疑応答までやり切っていた。審査員からは「ラブビームはどうやって実現するの?」とちょっと厳しい質問も。

 

チーム2「IRIS:Imaging of Real-world Information System%ef%bc%91%ef%bc%99

続いて、現役コンサルタント、医師、京大生のチーム。このチームのシーズも本学情報学研究科の中澤篤志准教授が開発したアイトラッキング技術。自動運転車メーカーと一次請けをターゲットとした機器で、脳波計とアイトラッキング技術を利用し、自動車事故が発生した際に、その原因が自動車の欠陥によるものなのか、運転手の過失によるものなのかを判断することができる。これによって自動運転車事故の責任の所在を明確にし、メーカー、一次請けの損害賠償費用を削減することが可能になる。将来的には、スポーツやエンターテイメント分野にも展開していく予定で、例えばスポーツ選手や歌手、俳優の視点を体験できる機器を考えている。

 

チーム3「COLOR UP YOUR LIFE%ef%bc%92%ef%bc%90

チーム3のメンバーは、ベンチャーのCFOを務める公認会計士、京大生3人のチーム。技術シーズは、本学情報学研究科の新熊亮一准教授が開発した「関係性技術」。関係性技術は、Webサイトの閲覧履歴、SNS上のつながり、オンライン・オフラインでの購買履歴、チェックインサービスから取得できる位置情報などのさまざまなデータを元に、人と人・人とモノの間にある関係性の時間的変化を数値化できる手法。対象を米国の20~40代のイノベーターとし、ウェアラブルグラスを販売。利用者がウェアラブルグラスをかけて日常生活を送れば、見たものがデータベースに蓄積されていき、関係性技術を用いることによって、蓄積されたデータを基に、利用者自身が意識していなかった新しい提案を受けることができる。例えば、書籍の購入の場合、Amazonはこれまでの購入履歴や閲覧履歴を基に新しい書籍を提案しているが、この技術を使えば、書籍だけでなく日常生活で見たもの全てのデータも付加し、それらデータ間の関係性を抽出し、書籍の提案を行うことができる。

 

チーム4「Harmonious Human Relationship%ef%bc%92%ef%bc%91

4つ目は、農学、薬学、情報学の3人の京大生チーム。技術シーズは、チーム3と同じく「関係性技術」であるが、このチームは、同技術を職場におけるハラスメント問題の解決に利用。ターゲットは、ハラスメントによる損害賠償額が莫大な米国企業。送信元、送信先、送信内容をデータベースに蓄積し、それらの関係性から両者間のハラスメントの可能性を測定し、可能性の高い社員を検知し、ハラスメントを未然に防ぐことができる。これによって、ハラスメントによる訴訟リスクを軽減することが可能になる。

 

チーム5「DepVaster%ef%bc%92%ef%bc%92

このチームは、医学、理学、情報学の3人の京大生チーム。技術シーズは、本学情報学研究科の辻本悟史准教授の研究「fMRIによるプレゼンテーションの評価」。この研究では、脳のfMRI画像を使って、良いプレゼンテーションとは何かを探ろうとしている。チーム5はこの技術を初期段階のうつ病患者に適用。従来の薬物療法や心理療法は、効果や副作用、継続期間の問題で有効とは言いがたいが、このチームが提案する治療法は、初期段階の患者の脳のfMRI画像を見ながら、脳活動を高めるトレーニングをしてもらい、患者自身にうつ状態をコントロールできるようになってもらう。この方法であれば薬物による副作用がなく、またうつ状態に対する制御力を身につけられるので持続的な効果が見込める。

 

チーム6「Application of Phosphor Ceramics into Vegetable Factory%ef%bc%92%ef%bc%93

トリを飾るのは、チーム6。起業家、元投資銀行、東大生からなる強力チーム。技術シーズは、本学環境学研究科の上田純平助教が開発した「新規蓄光セラミックス」。新規蓄光材料は、紫外光から青色光までを励起光源とすることができ、かつ残光輝度・残光時間が既存品に比べ優位。このチームは植物工場をターゲットにし、葉の病気を防ぐために使われている緑の蛍光の代わりに本蓄光材料を利用。従来材料はUV光しか吸収できないが、本材料は赤・青の光も吸収できるので、光合成のための使用されている青・赤の光のみで、電気の供給無しに緑の光を発光でき、コスト削減を図ることができる。

 

発表後の質疑応答では、「顧客はなぜその技術を買わなければならないのか?」「その技術なら、こう利用し%ef%bc%92%ef%bc%94た方が良いのでは?」「価格が高すぎないか?」「競合は?」「技術的に実現できるのか?」「どうやって儲けるのか?」などなど、審査員から鋭い質問やアドバイスがあったが、受講生は、言葉に詰まりながらも、英語で丁寧に質問に回答していた。その後、休憩が入り、審査員はその間に審査。休憩が終わり審査発表の前に、審査員長のDavid Heller氏より講評。「いずれのチームもパッションがあり、自分たちのビジネスのすばらしさを審査員に伝えようとする強い気持ちを感じた」「実現可能性はともかく、どのチームもすばらしい想像力を発揮してくれた」など、各チームの健闘を称える評価をいただいた。講評の後は、いよいよ審査発表。準優勝、優勝と順番に発表された。まず準優勝は、新規蓄光材料を用いた植物工場向け製品を考案したチーム6。蓄光材料の性質を活かした製品アイデアや、市場分析や競合分析、プレゼンテーションの質の高さが評価された。そして栄えある優勝は、アイドルオタク向けの製品「i-DERU」を考案したチーム1。英語はたどたどしく、市場や競合の分析などは十分とは言えず、発表資料やプレゼンテーションの質は決して高いとは言えなかったが、そのアイデアが高く評価されての優勝であった。確かに他の%ef%bc%92%ef%bc%95チームのアイデアは実現可能性が高そうで、ある程度の収益は見込めそうであったが、技術シーズから想到しやすいもので面白みにかけていた。それに比べると、チーム1の「i-DERU」は良くも悪くもアイデアがぶっ飛んでおり、実現できたときに大きく化ける可能性を感じさせるものであった。さらにアイデアに加えて、プレゼンテーションをする3人(特に、今回の研修のムードメーカーであった京大女子学生)がとても楽しそうであったのも良かった。まずプレゼンテーションをしている本人が、心からその製品をほしいと思わなければ、ターゲットの心には響かないだろう。優勝、準優勝の両チームには、審査員長から賞状と、副賞としてイスラエルの有名チョコレートメーカー「マックスブレナー」のチョコレート缶が授与された。

 

以上で海外起業研修は終了。明日は飛行機の時間まで自由時間。参加者は最終ピッチから解放され、イスラエルでの最後の時間を思う存分満喫したことであろう。5日間と短期間ながら、スタートアップ、ベンチャーキャピタル、大学と多くを訪問し、その中で最終ピッチに向けた準備をするのは大変な作業であったと思うが、今年の参加者は皆、海外起業研修に対するモチベーションが高く、強いパッションを持って取り組み、GTEPが海外起業研修で想定しているレベルを大きく上回る成果を出してくれた。心より深謝する。参加者には、この研修で出会った仲間とのつながりを大切にして、得た知識や経験をこれからのキャリアに活かしていってほしい。皆さん、お疲れ様でした。