Ph.D./博士後期課程 (経営科学専攻)

経営科学専攻(博士後期課程)

本専攻は、修士あるいは専門職学位を取得した後、企業等で高度な実務経験を積み、その経験を通して経営に関する問題意識を持った人を受け入れます。その問題意識をベースに、基本的には3年の在籍期間で博士論文を完成させます。論文完成までの研究を通して培った洞察力等を発揮し広く活躍するグローバルビジネスリーダーを育成します。 なお、企業等に在籍したまま、働きながら履修できるよう各種の配慮をします。

3つの専門領域

この博士後期課程では3つの研究領域の1つにおいて専門性を高め、かつ実務に役立つ総合性を身につけるための指導を受けることになります。

実践ファイナンス領域

<育成する具体的人物像>

  • 実際の金融証券市場のあり方を踏まえて、ファイナンス領域に関する海外市場の現状を熟知し、かつ実践的に分析でき、独自の発想に基づきファイナンス戦略を設計し実践できる人材。
  • 自身の戦略を海外の専門家に英語でロジカルに説明し、専門的な交渉解決をする能力を有する人材。
サービス・イノベーション&デザイン領域

<育成する具体的人物像>

  • サービス経済の進展に鑑み、企業・公的機関が直面する種々のサービス高付加価値化の課題に対して、グローバルな見地からサービス活動の観察・分析・評価の研究を行い、独自のサービス価値創造フレームワークの構築、検証を行える専門人材。
  • 海外のサービス経営専門家に対して、説明・説得を行える人材。さらに、様々な領域におけるビジネス展開において、デザインという視点でビジネスをリードし、イノベーションを起こせる専門人材。
プロジェクトマネジメント領域

<育成する具体的人物像>

  • 国内外の大型プロジェクトに関わる資金調達、入札、契約管理、紛争解決、運用、維持管理のためのマネジメント技術に関する理論・実証分析をできる能力を有する人材。
  • 大型プロジェクトにおけるリスク構造とガバナンス構造を分析し、その結果を実施管理できる人材。
  • 国際的な観点で、対象国における法、慣習、社会・経済を学際的に理解し、プロジェクト契約を支える制度基盤を分析できる能力を有する人材。

院長からのメッセージ

京都大学経営管理大学院長 澤邉 紀生

京都大学経営管理大学院長
澤邉 紀生

京都大学経営管理大学院(Graduate School of Management)は、京都大学の自由の学風のもとで、高度経営専門職人材を育成するための専門職学位課程を擁する大学院として、2006年4月に開設され、博士後期課程は2016年に設置されました。本大学院は、先端的なマネジメント研究と高度に専門的な実務との架け橋となる教育体系を開発し、幅広い分野で指導的な役割を果たす個性ある人材を養成するとともに、高い倫理性を伴った研究を推進することで、地球社会の多様かつ調和の取れた発展に貢献することを理念としています。

この理念を実現するために、PhD/博士後期課程(経営科学専攻)では、企業等で高度な実務経験を積み、その経験を通して経営に関する問題意識を持った人を受け入れて、博士論文に結実する実務に根ざした研究を推進の場を提供しています。本大学院のミッションを実現するうえで、研究と実務の架け橋となる指導的人財を養成することがきわめて重要で、PhD/博士後期課程は大きな役割を担っています。

本大学院の特徴は、経済学、工学、経営学、会計学、情報学といった幅広い専門分野の教員120名あまりが協力して、社会に開かれた大学院として内外の企業やNPO/NGOと連携し現代社会の課題に対応した教育研究を行っていることにあります。その具体的な姿は、経営研究センター、寄附講座、寄附講義、産学共同講座、客員講座、エグゼクティブ教育、社会人入門講座に見いだすことができます。

本大学院の英語の名称はGraduate School of Managementです。Business AdministrationではなくManagementという用語が選ばれているのは、営利企業の管理に限定することなく広くマネジメントに携わる有為の人財を養成すること、またそのための研究を行うことを宣言したものです。マネジメントを担うものの役割は、複雑で流動的な情況において方針を定め判断し、その意思決定が結果的に正しくなるようする責任を背負うことです。経営学の大家であるP.ドラッカーは全体主義の台頭の原因を論じたデビュー作に続く2作目において、このような責任を伴った選択のことを「自由」と呼んでいます。様々な意味で歴史的転換点にある今日、ローカルにもグローバルにもマネジメント人財が必要とされています。本大学院は、人種、性別、国籍にかかわらず、高い志をもった人々が切磋琢磨し、社会に貢献できる人財として成長する場を提供していきます。

在校生からのメッセージ

実践ファイナンス領域・博士後期課程 2021年4月入学 門澤 慎さん

実践ファイナンス領域・博士後期課程 2021年4月入学 門澤 慎さん

私は実務家として、資本政策・M&A領域でのアドバイザリー業務を行っています。資本政策・M&A領域の業務は、ファイナンスを中心とした理論を用いて業務を行うことが多いのですが、一方で日々、現場で業務を行う中で、慣行・慣習として使われているものの、理論的には説明できない、またはされていないと思われる考え方も存在します。私はこのような理論と実務のギャップに関心を持ち、そして可能な限りそのギャップを言語化・一般化したいという思いが強くなったため、本経営管理大学院博士後期課程の門を叩きました。現在は在学2年目の学生です。

研究活動は、やはり大変です。とくに、アカデミックの世界における論理的思考力や分析力の修得には苦労しています。しかし本経営大学院博士後期課程では、1年目に基礎科目の授業があり、研究の考え方や進め方をしっかりと(そして時には厳しく)指導していただけます。もちろん授業を受けたからと言ってすぐに修得できるものではありませんが、実務家としての自分がアカデミックの世界でものを考えるときに何が足りないのか、という点はクリアになりました。2年目からは本格的に博士論文執筆のための研究を進めることになります。博士論文の中間審査通過には、最低1件以上の学会への査読付き論文の投稿が必要となります。そのためまずはこの準備を進め、この9月に日本価値創造ERM学会で1回目の学会発表を終えることができました。今後は学会で指摘されたことも踏まえつつ、より広範なデータを集めるため、大規模アンケート調査の準備を進めています。

これら研究活動については、積極的に指導教官に相談しています。本経営管理大学院後期博士課程の教員は学会の第一人者ばかりですが、とても親身に相談にのってもらえます。他大学のことはわかりませんが、とてもすばらしいサポートを受けることができる環境だと思います。

また同期の存在もとても重要です。やはり社会人として仕事をしながらの研究は、時間的にも精神的にも非常に負担があり、気が付くと1か月2か月と研究が進んでいないということもしばしばあります。そんな時は同期のメンバーと、SNSグループや、数か月に1回程度、リモート飲みを開催し、お互いの状況や各人が持つ情報の共有をしています。とても優秀な方が集まっているため刺激を受けつつアドバイスも頂けるのは本当に感謝しています。

私が本経営管理大学院後期博士課程に入学して以降、周囲からはなぜ大学院に行くのか、意味があるのか、とよく聞かれます。そんな時は自分の人生の彩りを豊かにするため、と答えています。自分の博士論文が完成したらアカデミック的にも実務的にも意味があるかもしれない、といったこともあるかもしれませんが、それだけではつまりません。本経営管理大学院で博士論文にチャレンジ(何年かかるかわかりませんが)することで、人生の彩りがもっと豊かになるはずです。ぜひ本経営管理大学院へ興味がある方は、飛び込んでみてください。

修了生からのメッセージ

京都大学経営管理大学院長 原 良憲

プロジェクトマネジメント領域・博士後期課程 2019年3月修了 村上 啓二さん

経営管理大学院には論理的思考力と実践力を高め、アカデミックでは経営学の専門家になること、ビジネスでは事業の経営人材になることを目指し入学しました。その結果、研究と論文執筆を通じて、所期の成果が十分に得られたと実感しています。
経営管理大学院の講師陣はレベルが高く多くの知識を得られたこと、及び共に学ぶ社会人学生が優秀であり刺激を受けたことは、期待以上の効果でした。また、指導教官は学界の第一人者であり、私への指導もサポーティブであったことに感謝しています。指導教官からの導きにより学会や勉強会へ参加し、研究発表や議論を通じて高度な専門人と意見交換できたことは有意義でした。
研究活動について、1年目前期は基礎科目が中心ですが、1年目後期以降は専門科目へ移行し、専門領域における理論を深め、博士論文作成に向けた準備を進めました。中間審査通過には、1件以上の論文投稿が必要条件となりますが、私は博士論文の構成を想定し、グローバルビジネスジャーナルに査読付論文2件を投稿しました。この段階で査読者からアドバイスを受け、論文をブラッシュアップできたことは有効でした。
博士論文ついては、如何に独創性を持たせるかが最大の課題でした。既往研究の問題に着眼し、中心命題の新規性を見出し、論証結果の価値を高めることに最も時間を要しました。これに関して、指導教官・副指導教官を始めとする関係者からの指導を受け、完成度を高めることができました。
社会人として多忙な生活を送りながら研究活動を行うため、タイムマネジメントには苦労しました。然しながら、無事に博士後期課程を修了できた要因は、学術的に価値があり、実践でも通用する論文に仕上げたいという信念を貫き、それを完遂する執念であったと思います。その結果、博士学位を取得し、副代表として学位授与式に出席できたことは、3年間の努力が報われ、至福の喜びを感じる瞬間でした。
今後は修了生として経営管理大学院の発展に貢献すると共に、ビジネスでも経営人材として活躍できる様努めてゆきたいと考えています。
最後に、本博士後期課程への入学を検討されている方は、是非積極的にチャレンジしていただきたいと思います。博士学位取得は決して容易な道ではありませんが、その努力は自信に繋がり大きな成果をもたらすと共に、周囲からの評価にも繋がるものと信じています。