宮澤 真理枝さん

プロジェクト・オペレーションズマネジメントプログラム 2018年度修了生

世界保健機関(WHO)本部

数あるビジネススクールの中でGSMを選んだ理由

当初、海外のMBA進学を検討していましたが、高騰する学費及び海外滞在費の実情を知り、全てを自費で賄う資金的余裕がないことを理解しました。また、海外有名MBAの数百人レベルの学生数を考えた時、きめ細かい指導を期待できるのは国内MBAであると考えました。更に、私の場合、受験時点で既に20年以上の投資銀行での職務経験がありましたので、アカデミックなクラスとビジネス色の強いクラスの両方を備えた京大MBAに関心が湧きました。また、社会人経験のない学生と社会人経験者、そして、海外からの進学者など、幅広いタイプの学生が入り混じっている当大学院は様々な角度から物事にアプローチする力が身につくのではという期待もありました。社会人に負担の少ない職業経験を重視して選考を行う「特別選抜」も、応募を決意した大きな要因だったと思います。

GSMで学んだこと

宮澤 真理枝さん

GSMの授業は幅広い分野の専門家の方と大学での研究を長年重ねておられる教授陣によるユニークなものでした。先生お一人お一人の強い個性と魅力に触れるだけでも、非常に有意義な経験です。知識の蓄積や方法論の理解のみであれば、オンライン授業や自宅学習のみでも十分に結果を得られると思いますが、生の授業を通して、そこに参加する仲間との意見交換と授業をリードする教授が作り出す空間で得られるものは、瞬間瞬間が唯一無二の体験であり、キャリアを中断してでも、MBAに時間を費やしただけの意味と効果があったと思います。 以下、特に印象に残った授業をご紹介します。
①「Venture Creation Financing」https://ocw.kyoto-u.ac.jp/syllabuses2019/275/8/6760000 (Ant Bozkaya : UCバークレーMBA教授)
②「Business Modeling and Design」(Dimitris Karagannis:ウィーン大学教授)
③「価値マネジメント:戦略、リスク、財務」(御立尚資:元ボストン・コンサルティング・グループ代表)
④「ContractManagement」(大本俊彦:紛争裁定委員)
⑤「Project Finance」(安間匡明:元JBIC 他)
⑥「組織行動」(関口倫紀:GSM教授)
⑦「Strategic Practice for Open Market」(末松千尋:GSM教授)
⑧「Transportation & Logistic Management」(山田忠史:GSM教授、他 工学研究科教授)
⑨ 「ファイナンス」(加藤康之:GSM特定教授)
他学研究科:
⑩「民事訴訟法2A」(笠井正俊:法学研究科教授。元裁判官)
⑪「経営学研究」(武石彰:経済学研究科教授)

現在の進路を選んだ理由

宮澤 真理枝さん

ドイツ銀行、長期信用銀行、三菱UFJ信託銀行、モルガン・スタンレー、UBSなど、多数の金融機関を経験する中で、たまたま、昔の同僚や知人から世界銀行やアジア開発銀行に就職した話を耳にし、就職のためには修士の学位が求められる事を知りました。そのため、進学前に卒業後の進路の一つに国際機関への就職が視野にあったことは確かです。また、GSMで取得可能な「気候変動下でのレジリエントな社会発展を担う国際インフラ人材育成プログラム」International Program on Resilient Society Development under Changing Climate(http://www.drc.t.kyoto-u.ac.jp/rsdc/)に参加し、ASEAN諸国の学生達、並びに京大工学研究科の院生の仲間と京大及びタイ国の大学で合計3ヶ月程度、共に学ぶ機会が与えられた事も、国際社会に貢献するグローバル人材としての進路を検討するきっかけとなったように思います。そして、私のワークショップの課題が「個人と組織のWell-Being」であったことは、国際機関の中でもWHOを選択した理由になります。WHOは、「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」(世界保健機関憲章第1条)が組織の設立目的であり「健康とは病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。 」(前文)。政策研究という国家政策に対する支援を通じて社会貢献することの現場の厳しさを覗いた気がいたします。それは、例えば、目の前に「拳銃」「金塊」「卵」の3つが置かれていて、「この中から一つ選んで平和を実現しなさい」と言われたら、ある人は「拳銃」で弱い者イジメをしている輩を威嚇しにゆくでしょうし、ある人は「金塊」を使って一儲けしにゆくでしょう。またある人は「卵」を食べて満足するかもれない。つまり、平和(心地よい状態)は人によって千差万別であり、そのさまざまな価値観の入り混じったスープを鍋の中でぐるぐる掻き回すような事が政治だとすれば、政策研究の中立性を維持することの難しさは容易に想像できるでしょう。そのような理由で我々の中立性を保つための一環としてプロジェクトの資金調達、予算管理はコンプライアンス上も重要な位置づけとなっており、私も微力ながらその一端を担っております。

在学中、印象に残った出来事

宮澤 真理枝さん

京大GSMの特典は、ワークショップを通じて、担当教授から直接研究指導を受けられることです。1学年100名程度と入学者数が制限されているのは、学生一人ひとりにきめ細かい指導ができるよう配慮されているからだと思います。私の担当教授である河野先生は、工学部の大きな研究室を指揮監督されている先生ですが、GSMではとても気さくに接してくださいました。特に、WSの研究発表の追込みの時期には、できる限り時間を割いてくださりご指導を賜ることができ大変感謝しております。企業人として長年過ごせば、自分を取り巻く環境にいる仲間からは、同調は求められても、別の切り口からの厳しい指摘を得ることは難しいです。そのような環境から飛び出たお陰で、河野先生のゼミに参加でき、時には手厳しい指摘に目からウロコのような体験をいたしました。また、ワークショップの成果はプログラム全体の教授陣数十名の前で最後に発表しなければなりません。私の発表に対し、小林教授(現:経営管理大学院 特任教授)から受けたご指摘は、国際機関でのご自身の体験に基づく印象的な内容で非常に参考になりました。

授業以外に取り組んだこと

夏から始まる前述のRSDCプログラムで海外の学生に京都を説明できるよう事前準備をしようと京都大学コンソーシアムの主催する「京都を英語でプレゼンしよう」というプログラムに参加し、京都にある様々な他大学生とグループワークで京都について学びました。また、二年目は積極的にチューター活動に取組み、経済学部の学生の宿題のレビューや、国際プログラムの学生の生活面のサポートを通じ、外国から来た学生の立場を理解する機会が与えられたことは貴重な体験でした。さらに、先生のアシスタントを(TA)を行い、授業の準備やスケジュール管理、外部講師の先生とのコンタクトを通じ、大学授業の運営について知ることができました。京大内には、大手企業がスポンサーとなって主催されている起業支援プログラムも豊富にあり、京大ファンドが投資する成長企業も多くあり、起業家育成のコンテストに応募しプレゼンテーションビデオを作成しました。また、GSMの仲間たちと卒業後も繋がりをもてる事は私の大きな財産となっています。

入学希望者へ向けてのメッセージ

宮澤 真理枝さん

人生100年時代対策として、時間とお金を自分自身に投資するのであれば、GSMは一つの選択肢となるということです。私は、今後の社会人はGSMのような大学院に10年おき位に定期的に入学し自らを見直す機会を持つのも悪くないと思います。職務を遂行する際に、これまでのスタンスと大きく変わった点があります。それは、一つの問題に直面した時、「正しい、間違っている」という基準から、「Aを選択した場合に導かれる結論はBである」という因果関係のみの説得に基点を置き、導かれる結果としてのBが良い悪いという判断を前面に出さず、周りの反応をみるようになりました。また、質問を相手に投げる時、相手が答えられそうな質問だけに絞り、如何に相手が答えやすい質問形式になるかをデザインする事を意識するようになりました。海外本部とのコミュニケーションもその点を意識して行っているので、比較的遅いと言われているレスポンスもスムーズに受け取ることができているような気がします。これは、河野教授のご指導の賜物です(笑)。これから入学されるみなさんも、沢山の宝物をGSMで掴んでください。