2017.04.01

【科研】証券会社と企業間の資本関係が証券アナリストの公正性に及ぼす影響

研究種目

若手研究(B)  

期間

2017-04-01 – 2021-03-31

代表者

加藤 政仁 講師

キーワード

  • 証券アナリスト / 利益相反 / 金融コングロマリット / 銀行 / 証券会社 / 融資 / 株式保有 / 銀行融資 / 株式発行

概要

証券アナリスト(以下、アナリストと表記する。)は、雇用主である証券会社と利害関係にある企業に対し楽観的な投資推奨を作成していることが既存研究によって明らかにされている。本研究は、昨今の金融機関の特徴でもある複数の金融業を兼営する金融コングロマリットに焦点を当て、アナリストが銀行と利害関係にある企業に対して、公正かつ中立的な立場で投資推奨の作成業務を行えているかを検証する。 本年度は、①金融コングロマリットに属するアナリストは、銀行部門が融資を行っている企業や株式保有をする企業に対して、他のアナリストよりも”買い寄り”の投資推奨を作成していること、②こうした傾向は、当該企業の推定デフォルト確率が高いとき、すなわち当該企業の価値評価においてマイナスとなる要因が大きいときほど、より顕著にみられることも明らかにした。これら検証結果は、アナリストは、金融コングロマリットの同一傘下にいる銀行と利害関係にある企業には、公正かつ中立的な立場で投資推奨の作成業務を行えていないことを示唆するものであった。 アナリストの利益相反行為には、規制によるコントロールがなされている。現行の規制は、主に証券会社の投資銀行部門のクライアントをターゲット企業としたアナリスト・レポートの作成についてである。本研究はこの規制の効果についての検証を行い、③規制導入後に投資推奨の質が向上することを示す結果を得た。これは、アナリストの公正および中立性を高めるには、規制によるコントロールが一つの手段となりうることを示唆するものであった。