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2010.07.09

H22.07.09 経営管理大学院がシンポジウム「医療は成長産業となりうるか?―国際的視野に立つ医療システム改革へのチャレンジ―」を開催しました

経営管理大学院は、7月9日(金)に東京丸の内にある「丸ビルホール」において、「医療は成長産業となりうるか?―国際的視野に立つ医療システム改革へのチャレンジ―」(共催:みずほ証券株式会社)と題するシンポジウムを行いました。

この丸ビルシンポジウムは、みずほ証券寄附講座(企業金融)が2005年に経営管理大学院に設置されて以来、同寄附講座あるいは経営管理大学院だけ でなく、京都大学一般の教育、研究の成果を広くビジネス関係者、特に普段は直接のコミュニケーションが無い東京の聴衆に広く発信するという意図を持って行 なわれているものです。

今回の丸ビルシンポジウムでは、本学の西村周三理事・副学長をオルガナイザーとして、昨今の医療制度の見直しに関する議論が活発化するなかで、マス コミでも取り上げられることが多いビジネスとしての医療というトピックを取り上げました。この医療制度と病院経営の分野において異なる意見を代表する論者 にお越しいただき、それぞれの方々の個性的な立場から議論をしていただきました。

シンポジウムの前半では、次の3つの基調講演、講演が行なわれました。

・ 川渕 孝一(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 教授)
「医療は成長産業となりうるか-システム改革に向けての論点整理-」

・ 真野 俊樹 (多摩大学医療リスクマネジメントセンター 教授)
「メディカル・ツーリズムの将来展望」

・ 西村 周三(京都大学 理事・副学長)
「医療の付加価値をいかにしてつけるか」

これらの講演では、近年の医療技術の著しい進化を生かしながら、医療をどのように設計し、運営することによって、ビジネスチャンスとして生み出すこ とが出来るのかが焦点になりました。日本社会の高齢化が進むなかで、政府規制の改革と医療制度の新設計が議論されている背景の下、特に最近注目されている 国際的な医療サービスの展開をも含めて、多様な課題と多くの経済機会が存在することが明らかにされました。

その後、シンシポジウムの後半では、西村理事の司会でパネルディスカッションが行われ、KCCSマネジメントコンサルティング株式会社の森田直行会長と立命館大学医療経営研究センターの柿原浩明教授も加わり、前半の論調とは異なる立場から意見を述べられました。森田会長は、特に病院等の医療機関の経 営管理改善に取り組まれてきたビジネス体験にもとづいて、体系的な管理手法の導入が生産性の向上に大きく寄与することを議論されました。一方、柿原教授は 「成長性」を追求する医療システムが公平な医療機会という「社会性」を損なうことを危惧するという立場から、前半での講演の内容について批判的な見解を述べられました。

これを受けて、川渕、真野および西村各教授は、医療サービスの経済性の観点から、むしろ成長性を生かすことが公平性を維持する必要条件であるという 立場から、それぞれの講演の内容に即して応答されました。この「成長性」と「社会性」についての討論は活発に行われ、問題となる論点は明らかになりまし た。すなわち、医療技術の革新的進化がビジネスとして多くの機会をもたらすことについては各論者が合意しましたが、その機会が社会的共通資本としての公平性を維持、促進しつつ、産業として成長し、企業として繁栄する具体的な方策については見解が錯綜し、この問題の多様さと難しさを浮き彫りにする結果となり ました。

今回のシンポジウムには、会場の収容人数である240名の方々に参加していただき、白熱した議論を熱心に聴いていただけたこともあって、成長産業としての医療のビジネスチャンスと内包されている課題を明確化するという目標からは意義の深いシンポジウムとなりました。

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挨拶をする小林経営管理大学院長

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基調講演をする西村理事

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パネルディスカッションの様子
川渕教授、真野教授、森田会長、柿原教授

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会場の様子