芳井 理江 さん

観光経営科学コース 2023年度修了生

 

数あるビジネススクールの中でGSMを選んだ理由

芳井 理江 さん

私は大学卒業後に母の大病もあり、すぐに実家の旅館に従事してきました。20年近くいわゆる「女将」をしていましたが、世間がインバウンドで浮足立っている30代後半から京都市内で林立する宿泊施設の増加に今の自分の能力では、これからの荒波は乗り越えられないと一抹の不安を抱いていました。そんな矢先の2018年2月、京都大学と京都市観光協会で共同開催された数日間のセミナーに参加して衝撃を受けました。現場で体得したノウハウはさることながら、やはり、経営理論をしっかりと学びなおす必要があると痛感したのです。浅学さゆえに歯がゆい思いを何度もしてきた若い頃からの現場経験を検証・反芻していくこと、また今こそ体系的な学び直しをして論理的な思考力を深めていきたいと強く心を突き動かされていました。当時開講直前だという観光MBAコースにいつか入学したいと淡い希望を持ち続けていました。
コロナ直前に私が継ぐはずだった旅館はいったん主人の企業の経営傘下に入り、落ち着いて二人の子育てに向き合う中、ようやく時間的余裕をもてたことで満を持して2022年度入学を果たすことが出来ました。

在学中、印象に残った出来事

芳井 理江 さん

一番のインパクトは何をおいてもGSMの集大成でもあるワークショップレポートの最終発表で最優秀賞を受賞することができたことです。「それでも旅館に女将は必要か ―‘メディアに創られた女将像’からの脱却と新たなるアイデンティティ」という業界においてはなかなか扇情的な研究タイトルですが、指導教官の前川佳一先生の丁寧なご指導はもちろんのこと、山内裕先生や佐藤那央先生のアドバイスも頂き仕上げることが出来ました。実践的な含意は学術的な視点を組み込めたからこそ見出すことができ、研究を通して旅館のみならず観光業界の視野も大きく広げることが出来ました。

授業以外に取り組んだこと

芳井 理江 さん

若林直樹先生に声をかけて頂き「京都観光振興計画2025マネジメント会議」の京都市民公募委員に応募して会議に出席しました。京都以外のことはなにも知らない私が、GSMで培った体系的な理論をベースにいち市民として京都市の観光に対して意見を述べる機会を頂きました。また、以前から年に何度か各大学等にお招きいただき旅館業の視点から観光やホスピタリティ産業についての講義をしていました。これまでは実践に重点を置いていた講義をしていましたが、GSMでの授業や自身で学んできた理論で裏付けていくことで深い考察をもとに俯瞰的な視点で講義をすることが出来るようになりました。

入学希望者へ向けてのメッセージ

芳井 理江 さん

他大学院のことは知りませんが、ここGSMではあまり名刺交換している様子は見かけません。肩書を通さずバイアスの無い状態で授業内のディスカッションやグループワークを行うことで、一人の人間としての考えや興味を持っていることなどを時間をかけてじっくりと知ることができました。束の間のランチタイムなどであとあとになって、中には上場企業の社長、起業された方、名だたる企業に長年勤めている方、世界を飛び回り仕事をしている方など私からすると目もくらむようなキャリアを積んでいることが分かりおののくのですが、私のような旅館しか知らない人間でも経験値からなる知識などに興味深く耳を傾けてくれる方々ばかりです。ご自身のビジネスチャンスを広げるという打算的な思惑を持たず、純粋に学問を学び、また同じように学問を究めたいという学友と出会えることが一生の財産になるはずです。