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2016.09.26

H28.8.31 経営管理大学院開設10周年記念スペシャルページ「川北英隆 元経営管理管理大学院 教授 メッセージ」

川北英隆 元経営管理管理大学院 教授メッセージ(現 京都大学経営管理大学院客員教授、京都大学名誉教授)

   京都大学に経営管理大学院(以下、GSM)が設置されてから10年が経過しました。早いものだと思うとともに、修了した多くの学生の顔が思い浮かびます。そんな自分自身も、ちょうどこの10年間を区切りに、京都大学を退職したわけです。

<ワークショップのこと>
 GSMではファイナンスを担当しました。ファイナンス関係のワークショップの数は残念ながら少数です。一方で、ファイナンスと一口に言っても分野は幅広く、当然、学生がワークショップで研究したいと希望するテーマは多様です。
 そんなファイナンスは大きく分けて、数学を多用するかしないか、別の表現を用いれば、理論的な展開に重点を置くか、市場や企業のデータを用いて実証的な分析に重点を置くかに分けることが可能でしょう。もう少し正確に書けば、上に書いた大別は、少なくとも学生にはそのように見えるということです。
 当初、ワークショップは一人で運営していていましたが、参加を希望する学生数が多く、またテーマも幅広かったため、青山学院大学から京都まで教えに来てもらっていた白須洋子教授に、「ついでにワークショップも手伝って」とお願いをし、快諾してもらいました。
 そんなワークショップには累計で100名以上の学生が籍を置いていました。数えていませんが、今年度も最後の川北・白須ワークショップを開いているので、合計10年です。ほぼ毎回10名以上の学生がいるので、100名以上と計算しています。その学生の中には研究生として京都大学にやってきた留学生も含まれ、彼らとは2年間超の付き合いとなります。
 白須教授といつも話すのは、総じて言えば、社会人経験者の研究テーマが興味深かったということです。また、大学時代に論文を書いた経験のある学生も、ワークショップで興味深い研究テーマを選びますし、実際の研究の進捗も芳しいものがあります。さらに、それらの学生は他の学生に良い刺激を与え、ワークショップの運営もリードしてくれます。
 そこで思うのは、GSMにもっと多くの社会人を迎えることができないかという、設置当初からの課題です。もっとも、ファイナンス関係の企業が京阪神にはあまりないため、あったとしても営業の拠点しかないため、東京にサテライトキャンパスを設置する必要性が高く、資金・労力・工夫が必要になるでしょう。

kawakita20160831 

<その後の学生との付き合い>
 教員にとっての財産の1つは、社会に飛び立っていった学生とのその後の付き合いでしょう。このGSMを含め、専任の教員としての生活は13年間しかありませんが、会社生活と社会人大学院での非常勤講師を両立させていた期間を含めると、20年間を上回ります。
 社会人として学んだ学生の中には、当時はまだ若手でしたが、今では50歳に達するものも出て、起業した学生もいます。20年も経過すると、かつての学生は多様な財産になっています。もちろん、年に1、2回の会合も、いろんな層を持っています。
 面白い事例は、ファイナンス関係の会社を起こした社会人学生です。それも海外(バミューダ)の会社で、事業が軌道に乗り、家族全員が海外で暮らしています。ロンドンへの出張ついでに、その学生の生活と事業の状況を見学したことがありました。彼が直接、間接に取引している企業や組織にも案内してもらいました。日本ではユニークな事業分野なだけに、その実際を見聞できたのはありがたいことでした。
 その時、京都大学の特徴である独創性が、まだ残っているのだと思いました。この独創性をいかに残し、さらに育てていくのか、多分、東京圏に住んでいたら世の中の流れに巻き込まれ、それを客観的に見ることができないでしょう。とはいえ、時々は、多くの人間の思考や行動の流れも体験しなければなりません。この点において、東京から遠くもなく近くもない京都には、大きな地の利があります。

<新しい10年に向けて>
 GSMの修了生ではなく、京都大学法学部の卒業生が「本当の実り豊かな証券投資は東京では無理」「京都大学を証券投資の研究や教育の拠点にしたい」というので、寄附をしてくれています。その寄附金と、その他の寄附金を集め、今年度からGSMに「投資研究教育ユニット」を設置いたしました。GSMの設立から数えて11年目からのスタートであり、この先の新しい10年を見据えたユニットにしたいと考えています。
 GSMが社会的にもっともっと認知されるよう、いつまで続くかは不確かながら、多少なりとも尽力したいと思います。

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