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2016.09.26

H28.8.31 経営管理大学院開設10周年記念スペシャルページ「大本俊彦 経営管理管理大学院 特命教授 メッセージ」

大本俊彦 経営管理管理大学院 特命教授メッセージ(教授:2006年~2010年、客員・特命教授:2010年~現在)

「京都大学経営管理大学院の役割」

omoto 20160913
 京都大学経営管理大学院(以下、GSM)の10周年を迎えるにあたり、ちょっと思うところを書いてみます。

  20数年のゼネコン勤務のほとんどを国際プロジェクトにかかわり、退職後建設プロジェクトコンサルタントを営んでいた筆者がGSMに実務家教員として参加 した動機は、ひとえに国際的ビジネスに強い日本人ビジネスマンやエンジニアを育てたいということでした。というのは自分が勤めていた会社でも他のゼネコ ン、コンサルタント、延いては商社に至るまで日本人社員の契約観念の欠如、商取引紛争解決に関する知識や経験の貧困さ、交渉力の無さには目を覆うものが あったからです(現在もあまり変わってはいませんが)。

  2006年にGSMが設立され、その後数年は小林潔司教授をはじめとして国内の大手ゼネコン、大手コンサルタントなどを対象に実務経験を有するというカテ ゴリーの学生のリクルートに励んだものです。事実かなりの企業が学生を送り込んでくれました。しかしその中にはGSMを終えるやすぐ新たな職を求めて元の 会社を退職するものも出てくる始末です。米国のMBAに企業留学し卒業とともに転職する日本人がいるという話は聞いていましたが、GSMで同じことが起こ るとは思ってもいませんでしたので、企業も我々もかなり憤慨したものです。しかし逆の見方をしますとGSMで力がついたからこそ転職しようとその卒業生は 考えたに違いありません。大成功ではありませんか。

  筆者はGSMでの教授時代も退職後客員教授あるいは特命教授としても「契約管理と紛争解決」という講座を持ち、2011年から国際コースの基礎講座として 「Contract Management and Dispute Resolution」という英語の講義に変更して今も続けています。日本語講義の時は日本人学生10~15人に対して、留学生は5人程度でしたが、英語 講義にした途端にその比率が逆転し、国際コースの留学生15人に対し日本語コースの日本人学生5人となりました。今年(2016年)は留学生19人に対し 日本人学生が7人とほとんど変わりありません。ところでこの7人のうち一人だけが今年の工学部卒で、大手ゼネコンやコンサルタントからの企業留学は皆無で す。GSM設立当時に持っていた技術系日本人を国際的ビジネスマンとして育成するという夢が実現できなくなったのです。

  しかし自分が留学した英国の大学や友人達が留学した多くの米国の大学、ヨーロッパの大学では留学生の数の方が多い場合さえあります。もっといえば他国籍の 教員が圧倒的に多い大学さえあります。いまさらおまえは何を言っているのかといわれそうですが、大学とはいろんな面で開かれた場所であるわけで、中でも教 員、学生の国籍にバラエティーがあって然るべきなのです。も ちろん日本人が国際的に競争力のあるビジネスマンになってほしいし、機会があればそのために尽力したいとは思いますが、今ではGSMに対する筆者の考え方 が変わり、どんな国からの学生にも「Contract Management & Dispute Resolution」を熱意と誠意をもって教えていきたいと思います。それが世の中に対する貢献だと思っています。今年の集中講義は8月の初めに済みましたが、来年の講義を今から楽しみにしています。


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