教員紹介

教員紹介 2025.09.16

2025年度 新任教員のご紹介:南 正太郎 特定准教授

京都大学経営管理大学院では、2025年度 新たに個性豊かな教員を迎えました。ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパン寄附講座 南正太郎 特定准教授をご紹介いたします。

【はじめに】
学びを深めるほど、この世の中は知らないことがたくさんあるのだといつも感じています。自己紹介文を書くにあたり、自らに関する様々なことを思い起こしましたが、それらをうまく表現できるほど文章を巧みに書くことを得意としておりません。それは恐らく、自分が何者であるかということについて、まだ十分に理解できていないからかもしれません。しかし、新任教員の素顔をお伝えするという今回のテーマに向き合い、私自身の研究への想いを込めながら、一人の人間としての姿を皆様にお伝えできればと思います。

【二人のイギリス人が教えてくれた幸福の本質】
「なぜ人は生まれてきたのでしょうか」
この問いに、ストレートに答えるのは難しいと思います。では、視点を変え、「花が咲くのに理由が必要でしょうか」、「川が流れるのに目的が求められるでしょうか」と問うた時、哲学者アラン・ワッツなら、きっとこう答えるでしょう。
宇宙を構成する無数の星々のように、地球という星を構成する一つひとつの存在として、私たち人間もまたここにいるのだと。すべてはつながり合い、一つの大きな存在の一部であるということを言っています。
この視点に立つとき、私たちは幸福になるために生まれてきたのではなく、幸福こそが私たちの自然な状態なのだということが見えてきます。そして、その幸福は過去の思い出でも未来への期待でもなく、「今この瞬間」にのみ存在するものなのです。
音楽に例えてみましょう。聴衆も演奏者も、メロディが奏でられるその瞬間に完全に没入したときにのみ、真の美しさや深い感動を体験することができるのではないでしょうか。
つまり、幸福とは将来手に入れるものでも、過去に失ったものでもありません。呼吸をし、心臓が鼓動し、意識が輝いているこの瞬間こそが、幸福そのものであり、人生そのものなのです。
もう一人のイギリス人、哲学者バートランド・ラッセルは興味深い指摘をしています。近代の技術は社会全体に『ひま』(余暇)をもたらし、それが公平に分配される可能性を生み出すと述べ、「怠惰への賛美(In Praise of Idleness)」として、一日四時間の労働ですべての人に十分な満足を与え、失業者もない社会の実現可能性を論じました。

近年のAI技術は、かつてない効率化と生産性の向上をもたらしています。これらの技術革新は本来、人々を物理的にも精神的にも解放し、そこから真の幸福を生み出すものでなければならないと私は考えています。技術革新の真の価値は、より多くの生産にあるのではなく、より豊かな余暇と深い思索の時間を人々に提供することにあるはずです。なぜなら、人は幸福でいるために生を受け、技術は人の幸福のためにあるべきものだからです。

しかし、現実はどうでしょうか。さらなる生産性向上、効率化、絶え間ない成長が重視され、人々は以前にも増して働かされています。SDGs、ESG、ウェルビーイングといった美しい理念も、表面的な取り組みをアピールするための道具と化し、本質的な変革を避ける免罪符として使われているケースが少なくありません。
定年延長、女性活躍推進、非正規雇用の拡大を仕組みとして制度改革したことは、意図的に社会全体の労働参加率を高め、時間を切り売りする労働者をより効率的に活用するためのシステムを作るのを狙ったかのようです。社会厚生のメリットもあるのでひとまとめに批判はできませんが、幸福の視点からは課題も見えてきます。
ここから導かれる結論は明確です。効率性のためのAIではなく、人々の幸福のためのAI活用という根本的な価値転換が必要であり、この新しい社会変革に適応できる経営思想・社会思想の確立が、これからの社会には不可欠な指針として求められていると思います。
誰かがこの道筋を示さなければなりません。だからこそ、私はこの課題に取り組んでいます。世の中を注意深く観察し、具体的な課題を見つけ、研究を重ね、実践的な提案を行い、それを社会に問うていく——そのような研究活動をこれからも続けていきたいと思います。

【日常の中にある小さな幸せ】
この文章を書いていると、朝食の時間になりました。昨晩釣り上げた魚を使おうと思います。調べてみると、イサキの仲間であるコショウダイという魚だそうです。新鮮な魚を味わえる、こんな小さな幸せもまた、「今この瞬間」にある喜びの一つなのかもしれません。
皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパン寄附講座
https://www.gsm.kyoto-u.ac.jp/collaborative-research/united/