寄附講座

キュレーション理論・実践とマネジメント寄附講座

設置期間

2025年4月1日~2028年3月31日

寄附者

牧 寛之

概要

キュレーターは元々、美術館や博物館などの収集品を「cure(ケア)」する役割を担っていた。20世紀には近代芸術を調査し、展覧会として構成・公開する仕事へ変化し、作品の収集と展示を通じた美術館制度の担い手となった。さらに戦後は国際芸術祭やパブリックプロジェクトのディレクションなど多様な仕事が加わり、その活動範囲は「美術館の外」へも広がった。キュレーターは、主に視覚芸術を解釈し、その解釈に沿って芸術をあらゆる事象やロジックと結びつけて再度プレゼンテーションし、知的・感情的活動など分析が困難な事象の抽象化を行うなど、鑑賞者と作品を媒介する役割を担っている。また、展覧会の制作だけではなく、美術館の建築・設置や、作品制作と収集、地域との連携プログラムの運営など、芸術を媒介とした知を生産する場づくりや、これらの活動を通して美術史を形成していく役割にもキュレーターが携わっている。
とりわけ昨今では、ウェブ上の情報を整理・編集し、新しい価値を創出する活動をキュレーションという言葉で呼ぶ例も増えている。また、アーティストの思考法を応用して独創的な商品やサービスを生み出す可能性について、企業の注目が集まってもいる。キュレーションのみならず、アート全般が生み出す価値に対する社会の関心は、かつてなく深まっているといえる。しかし、幅広い分野に応用されうる共通の知となるには、中核を成すアートの領域におけるキュレーション理論の整備は、いまだ不十分であると言わざるを得ない。
このため、本講座では、キュレーションならびにキュレーターの思考法や価値を明らかにし、理論化・一般化への研究を進めることによって、芸術と企業実務の融合的な理論として、その実践とマネジメントの確立を目指す。
本講座は長くキュレーターとして活躍してきた芸術関係者や、企業のデザイン部門に所属し、マネジメント経験のある実務家、文化経営理論の研究者等によって構成される。その繋がりから芸術家やキュレーター、展覧会の調査、ならびに国内外における展覧会やセミナー等のプロデュースなど実践的な活動と研究を行う。

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